買い手側のメリット
■事業の拡大や収益改善が図れる
企業は、経営戦略や事業ドメインの再構築といった計画を策定するわけですが、このプロセスにおいてM&Aが選択肢の一つとして挙げられます。例えば、今後大きく伸びるであろうと予測される市場に経営資産を集中させる場合、ノウハウを持っている企業と提携することができれば、競合他社より優位な事業展開が実現するかもしれません。あるいは、自社の弱い事業部門を強化し、収益構造を改善しようとした場合、すでに実績を持っている企業を買収することができれば、収益力は大きく改善されるかもしれません。このように、事業の拡大や収益力の改善をめざす場合、M&Aはきわめて合理的な手法となります。
■迅速な展開が可能に
企業にとって、経営資源である「人・物・金・時間」を効率的に投資することはとても大切なことですが、市場での競合状況や成長速度によっては、展開のスピードやタイミングが最優先課題となる場合があります。このようなケースにおいては、自社で人材を育成し、ノウハウを蓄積していくというプロセスが危険に直結してしまいます。そこで、すでに人材やノウハウを有している企業の買収、あるいは提携が必至条件となってくるのです。市場での展開スピードが命運を左右すると判断した場合、M&Aが最も的確なプランと言えます。
■費用対効果に優れ、リスクも最小限度
新規事業への進出や事業拡大を検討している企業にとって、「投資効率(コスト)」という視点だけで比較してみると、M&Aは投資コストが低く、リスクも最小限度に抑えられるというメリットがあります。自社単独で目的の事業規模や陣容を整えるためには膨大なコスト(資金・人的労力・時間)を必要としますが、既存企業を買収することになれば、投資コストは大きく抑えることが可能となります。実際に稼働をしている企業を買収するわけですから、その売上や収益なども把握でき、優れた費用対効果を実現できることになります。
売り手側のメリット
■後継者不在でも会社を存続させられる
後継者不在により廃業する企業は年間で7万社を超えるといわれています。これにより失われるものは計り知れません。守り抜いてきたブランドや技術、ノウハウ、顧客などが消えてなくなってしまいます。もちろん、従業員や取引先も大きな痛手を被ることになります。しかしながら、M&Aにより売却や提携が実現すれば、会社は存続することになり、未来に向けて次の一歩を踏み出すことができるようになります。
■経営基盤を強化できる
一般的な傾向として、売り手側の中小企業の多くは、資金調達力や販売チャネル、商品開発力といった課題を抱えています。一方、M&Aにより事業の拡大を検討している企業の多くは、安定した経営基盤を有しています。つまり、これらの企業への譲渡や提携は、自社の経営基盤の安定と強化を実現できる可能性が高くなるということです。買い手側企業の信用力や販売力により、自社の資金調達力の強化や販売チャネルの拡大が図れ、課題を解消することができるのです。
■株売却の譲渡額が期待できる
後継者難が原因で廃業をする場合と、株などの売却による譲渡を比較すると、どちらが株主にとって有利なのでしょうか?これは事業の状況(売上や資産、財務状況など)によっても異なりますが、一般的には、税制の違いなどの理由により、株式を譲渡することによる企業売却のほうが株主の手取額が多くなります。これにより、株主は安心して次の人生設計を行うことも可能となるのです。